だててんりゅう/鬼の唄評論 

「だててんりゅう/鬼の唄 バナナ」

KUMEさん評論

「だててんりゅう/鬼の唄 バナナ」

 1977年9月15日、田島ヶ原野外フリーコンサート。

この2曲を聴いて一番初めに感じたことは、「世界に通じる音」、

そして「言葉は調べれば理解できる」ということ。

 「世界に通じる音」 ロックというフォーマットを使用しながら、

日本=和 のエッセンスを導入するという方法論。 遠い昔から現在にいたるま

で、無数のバンド、人がこのことにチャレンジしてきたはずだ。 そして、

言うことは簡単だが、実はこれが最も難しい。 実際のところ、だててんりゅう

を聴くまでは、日本にはそんなバンドは無いと思っていた。

 高橋竹山の三味線は世界に通じただろう、ある種の雅楽は世界に通じるだろ

う、阿部薫のサックスや山下洋輔のピアノは世界に通じただろう。

しかし、ロックというフィールドで恐らく現在までその可能性を見たことは無

かった(アプサラスは残念ながら聴いたことが無い、、、)。

 日本でロックと言えば、その殆どがアメリカ、ヨーロッパのバンドの猿真

似。 よく言ってもコピー。 山内テツのように向こうのバンドに入って音を

創るのであれば全く問題無い。 だが、それは西洋のバンドの音で、日本人の

バンドでは無い。 ダモ鈴木にしてもそう。 フラワー・トラベリン・バンド

、、、、石間秀樹のギターはシタールを模倣したモノで、オリエンタルなら

日本かと言えばそうでは無く、あくまでインド。

 77年のだててんの演奏は確かに若い。 巧いバンドなら同時代にだって他に

幾らでもあっただろうが、出てる音の種類が全く違う。 次元が違うと言っても

いい。 隣さんのオルガン、キーボを軸に、井上さん&杉浦さんの最強リズム

セクション! 西峰さんのギターに現在のエフェクトがあったら(時代的に

無理は承知で)、どんなコトになってしまうやら。 兎に角、最強の音!

唯一無二の音。

 「言葉は調べれば理解できる」 だててんりゅうの唄は日本語。

言い古された表現を使えば「日本語のロック」。 僕はずっと世界を見るなら

「英語」で歌わないと意味が無い、という馬鹿げた妄想を持っていた。

だから、ジョー山中や金子マリの英語の発音がもう少しどうにかなれば、、、

何ていうコトを真剣に考えている時期があった。

  しかし、冷静に考えてみれば世界中の人達が、アメリカやイギリスの

「英語」で歌うバンドを聴いて、どれだけの人がその言葉を理解するか?

アフリカン・アメリカンのRAPを聴いて1曲のうちの10分の1でもヒアリ

ングできる人がどれだけいるか? そう、「英語」である必要は全く無いのだ。

いや、逆に「日本語」のイントネーションこそが面白い。

 脳の無い日本人RAPやサウザント(1000?)・オールスターズがつまらない

のは、英語のイントネーションで日本語を使うから。 しかし、隣さんのヴォ

ーカルはネイティヴなのだ。 日本語を日本語のイントネーション、メロディで

唄っている。 これでなければ何も意味が無い。

 また、隣さんの書く詩は、確かに深いしわかり辛い。 日本人でもそのニュア

ンスさえ理解することは大変なことかもしれない。 だが、「言葉は調べれば理

解できる」のだ、ある程度は。 だててんの歌詞カードを辞書をひきながら理解

しようとするアングロサクソンやアフリカン・アメリカン。

 それにしてもこの2曲の隣さんのヴォーカルは凄まじい! 鬼になり、般若に

なる。 かといって、完全なストロング・スタイルかというとそうではない。

1から10までパワーで押し通すスタイルが全盛の時代に、どこか「スカシ」

が入ってくる。 「爆発と緩和」、理想的だ。

 「世界に通じる音」にノル「ネイティヴな日本語詩」。

 当然のことながら、必然、必聴。

(Kume2006)

URCに残る7080年代の大量のライヴ音源から、
そのハイライト部分をよりすぐったオムニバス盤。

Track List

01 ライトハウス(四人囃子)
02 鬼の唄(だててんりゅう)
03
バナナ(だててんりゅう)
04
風来坊(キングコングパラダイス)
05 Papa’s Got A Brand New Bag
     (キングコングパラダイス)
06
サマータイム・ブルース(子供ばんど)
07
浚渫/ SalvagePANTA
08
欲望/DesirePANTA
09
けだるい(安全バンド+四人囃子)
10
きめてやる今夜(内田裕也)
11
コミック雑誌なんか要らない(内田裕也)

収録時間約70


Label: CARAWAY RECORDS
Catalog Number: CARA-3019
Release Date Japan: 2006.7.25
Formats: CD
2,800(税込) 廃盤

この記事を書いた人 Wrote this article

masaotonari 男性

鍵盤奏者(keyboardist)ピアノ、オルガン、シンセサイザー(鍵盤楽器)を演奏するミュージシャン。​ソロ、バンドはだててんりゅう。自営業(法人用ギフト)。有限会社 隣(となり) 代表取締役。

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